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大きな森の木の下で 第二話


 

ぴんぽーん

「はあーい」
玄関のチャイムが家中に響く。
クリスの母、ドロシーは、ガチャリと玄関のドアを開けた。
からんころん、と玄関ドアから吊り下げられた鈴が鳴る。

「あら、エイプリルちゃん。いらっしゃい」
「こんにちは。」

玄関の前には女の子が一人。
あいさつをして、ぺこりと頭を下げた。
クリスと同じくらいの年頃、
赤みがかったブラウンの、ゆるくウェーブのかかった長い髪。
きりりとした太めの眉に大きな緑の瞳が印象的。
快活そうなお嬢さんである。

「これ、今日の分です。」

そう言って、女の子はA4サイズくらいの封筒と、
カラフルな動物の描かれたクリアファイルを差し出した。
中には、何やらプリントが数枚、挟まっている。

「ありがと。いつも悪いわねー、余計な手間かけさせちゃって」
ドロシーはそう言いながら、封筒とファイルを受け取った。

「いいえ、これも学級委員長としての職務ですから」
「学級委員長として」
「え?あ、そ、そうですよ、学級委員として。」

軽く動揺するエイプリル。
ドロシーはにっこり笑って、エイプリルの肩をぽん、と叩いた。

「そ、それでは、私は失礼しますので!」
なぜか顔を真っ赤にしたエイプリルはくるりと回れ右し、
その場を立ち去ろうとする。

「たまには家に入っていかない、お茶とお菓子ごちそうするよ」

ぴたりとエイプリルの足が止まった。

「あ、あの、お構いなく」
エイプリルは、ぱたぱたと顔の前で手を振る。

「クリスは今出掛けてて居ないけど。
 あの子の作ったケーキがあるんだよね。
 二人暮らしだからさ、結構余っちゃう事もあるの。
 良かったらどう?今までのお礼も兼ねて」

しばらく考えたエイプリルは
「それでは、お言葉に甘えて…」
おじゃまします、と玄関のドアをくぐり、中に入っていった。

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