■■■■■

 

大きな森の木の下で 第三話



と。
なんやかやとあり、現在に至る、というわけだ。


「ママはもう、パパのこと忘れちゃったのかなあ…」


顔を伏せて呟く。
「…つまり、不登校の息子をほったらかしにして、死んだ旦那の事も忘れて
 新しい男と仲良くしている母親だ、と」
顔をばっと上げ、ロビンの方へ顔を向け、
「そ、そんな言い方ないだろ?
 ママをそんな風に悪くいうなよ」
「ふむ。それでは、問題を抱えた息子を持った未亡人を誘惑する
 その男性が悪いのか」
「わ、悪くない!よ…あの人は…別に悪い人じゃ…」
声を荒らげたが、徐々にトーンが下がっていく。
「彼の事が嫌い、というわけではなさそうだな」
足元の草をぎゅっと強く握りしめる。

「すごく良い人だ、とは思う。けど。」
川の方へと視線を写し、眉間にしわを寄せた。
「何かこう、パパの存在が、どんどん薄くなっていくような気がして怖いんだ」
ロビンはす、っと目を細めた。
「はあ、どうすれば良いのかなあ…。
 森の神様にお願いしたら、どうにかしてくれるかなー」

クリスは大きくため息をついた。
「森の神はそのような個人的な人生相談には応じない。」
冷たくロビンは言い放つ。

「う。うん、そりゃそうだよね。はあ」
「…君のお父さんはどう思っているんだろうな」
「え?だって、パパはもう…」
「ま、例えば、の話だ。」
「・・・・・・・」

クリスは少し考え込んだあと、すっと立ち上がる。
何か思うところがあるのか、そのまま走り出した。

ふ、と途中で立ち止まり、
「ロビン、話聞いてくれてありがと!」
と叫ぶと、再び走り出した。

「やれやれ」
ロビンは苦笑しつつ、クリスの背中を見送った。





<第三話    おしまい>               目次           

メニューへもどる

■■■■■